Nasto Tours編集部
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【業界知識編】国内のタオル製造

タオルの国内需要は21年後半から回復基調にはいっているものの、コロナ前の水準に比べると1割ほどダウンしている水準で推移しています。


 22年10月に入り、新規コロナ患者の発生数も減少してきていることや、このところ社会的な行動制限もなくなってきているので、景気全体には改善傾向が継続しています。タオル業界では、スポーツイベントやコンサートなど、一部を除いては人数制限もなくなりつつあるため、これに伴うイベント需要が増加してきております。また、法人の名入れタオルなども、景気回復とともに件数、数量とも増加してきている実感があります。


 量販店などチェーンストアなどでは、コロナ禍の「巣ごもり需要」自体は衰えてきているものの、食品や生活必需品の消費は堅調に推移しており、また、百貨店では高級品中心に緊急事態宣言が出されていた前年に比べると大きく売上を伸ばすなど、小売店での販売も一定の活況を取り戻しつつある状況であるといえます。


 こうした中、国内で消費されるタオルの量をみると、2022年の推計(21年9月~22年8月までの前年伸び率を9月以降の各月前年実績に乗じて、1~12月で合計をしたもの)では、21年対比108%(国産タオル同105%、海外製タオル同108%)と堅調に伸ばしてきつつあるものの、内需全体ではコロナ前の2019年に比べると87%程度にとどまっており、コロナ前の水準にくらべ1割強の減少になっております。


タオルの国内需要量、コロナ前(2019年=100%)との比較(1~12月)


内需トン数比較
2019年
2020年
2021年
2022年
海外製タオル
100%
80%
82%
89%
国産タオル
100%
79%
77%
81%
タオル内需合計
100%
80%
81%
87%


国内のタオル製造は、今治タオルを中心に市場は戻りつつあるものの、今後、構造的な問題からボトルネックが発生して伸び悩むことが懸念されています。


 国内メーカーを苦しめている第一の要因は、タオルの原材料である綿糸価格の高騰です。1年ほど前から、世界需要の好調を背景に、投機的な要因も絡まり原料綿花価格の主要指標である「NY綿花先物相場」が大幅に急騰、22年5月には記録的な高値をつけました。その後、NY綿花先物自体は6月末に急落、以降最近は概ね平年の値段をやや上回る水準まで下がり、落ち着いた動きとなりつつあります。一方で、我が国は原料綿花、綿糸については、ほぼ100%輸入しているので、折角単価が下がり基調にはいったにもかかわらず、4月以降急速に進んだ円安の影響から輸入価格は高止まりする結果となっています。21年後半より原料高の影響を受け綿糸価格は上がってきましたが、こちらが解決しつつある状況の中、今度は大幅な円安でパンチを受けることになり、国内で受け渡しされる綿糸の価格は非常に高い水準での相場形成となっております。

 

 具体的には、一般的なタオルに使用する糸(20番手単糸)でみると、今治地区での受け渡し価格は、1梱(180kg)あたり、ここ10年の平均で67,400円でしたが、22年入り後大幅に上昇、足許8月の受け渡し価格は同156,500円となるなど、当面は上がり基調で目先しばらくは下がる気配をみせていない状況です。

 

 加えて、重油などの燃料、電力、ガスなどのインフラ料金の高騰も深刻で、現状、タオルの製造コストは大幅に高騰しております。国内製造業者は、月を追って連続的に販売価格の引上げをしないと赤字に陥る状況で、小売業者や流通業者との値段交渉が激しさを増しており、流通を経て、消費者物価を上げざるをえない状況に陥っております。本来コロナ禍からの景気の回復とともに上向いてきている需要に対して水を差す結果となってしまっており、引き続き苦しい状況が続いているといえます。

 

 


 もう一つの構造的な要因は、タオルの最終工程の「ヘム縫い」工程における縫製工の減少についてです。タオルの製造工程では、縦にタオルが連続している状態で仕上がったあと、一枚一枚に裁断、上下の端の部分(ヘム)の仕上げとして、ミシンがけをして完成させています。この「ヘム縫い」工程は、タオルの仕上げの最終段階にあり、すべてのタオルに関して行われているものであり、それぞれのメーカーは、仕上げの部屋に多くのミシンなど縫製ラインを持っています。一方で、この縫製工は従来からの人手不足で高齢の女性が多く、コロナ禍の問題もあった中、このところ毎年のように人数が減ってきている状況です。


 この問題に対処するため、各メーカーでは、「自動ヘム縫い機」を導入、従来手作業で行っていた工程を機械化するべく努力していますが、今治地区では、今治タオルの特徴の一つである分厚い生地の場合は、一般的な「自動ヘム縫い機」ではうまく縫うことができず、ものによっては、従来通りの手作業でやらざるを得ないケースが多々発生しております。また、品質表示や、ブランドネームなどを通常ヘムに一緒に織り込んでいますが、この小さな織りネームを自動的に一定の場所にセットして自動でヘムをかけることが機械上なかなか難しく、「自動ヘム縫い機」にそぐわないタイプのタオルも散見されています。加えて、最近は半導体や希少金属などが世界的に不足しており、「自動ヘム縫い機」を新たに発注しても、なかなか製品として手に入れにくい状態が続いていることも、産地の活性化を妨げる要因となっています。


 現状、生産量は増加してきているとはいえ、コロナ前の2019年に比較すると、22年の仕上がり予測では、まだ1割以上生産量が少ない状況なので、「ヘム縫い工」の構造的な減少は足許大きな問題になってはいません。しかし、今後景気の回復とともに消費量が大幅に増してきた場合、この点を構造的に解決していかないと製造上のボトルネックとなり、産地の活性化が妨げられることになる可能性も懸念材料として存在しています。

    


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