Nasto Tours編集部
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【基礎知識編】 タオルの製造コストは上がっているのでしょうか?

タオルの製造コストは、以下の3要素で上がっております

 ① 原料綿糸価格の高騰

 ② 為替の円安

 ③ 海上運賃高騰など輸入コストのアップ


 日本のタオル流通の8割が海外製です。海外からの輸入に関しては、上記の3要素はすべて直撃してコスト高となっております。一方、残り2割を占める国内生産品ですが、日本国内では原料綿花を生産しておらず輸入に頼っているため、製造メーカーの原料購入という点に関して、上記三要素はコストアップ方向に大きくシフトしています。


 したがって、タオル製品は、生産地が、国内、輸入に関わらず、すべてのタオル製品の製造コストが上がってきている状態です。


① 原料綿糸価格の高騰

 綿花価格の指標とはなっているNY綿花先物価格は、コロナの世界的蔓延による経済停滞により2020年春に大きく値を下げた(1ポンド辺り50セント近辺での取引)が、その後アメリカでの景気回復とともに値をあげており、直近の2022年1月では、およそ同1ドル20セント程度での取引となるなど、10年ぶりの高値圏で推移しています。

綿花価格の変動

 タオル製品の原料となる綿糸単価に関しては、綿花を混紡している紡績メーカーの製品販売価格であるので、紡績メーカーの過去の比較的安値の綿花備蓄により、タイムラグがあって響いてきますが、例えば今治地区では、2021年9月以降急速に綿糸価格が上昇しております(主なタオルで使用する綿糸20番手シングルでは、購入平均単価は、2021年1月では1梱あたり72,300円であったが、同11月では118,300円になり、6割以上の上昇となっています)。

 輸入のタオル製品価格は、海外タオル製造工場が紡績からの一貫工場の場合は、比較的原料価格の上昇が緩やかであるが、小規模工場で綿糸を購入に頼っているメーカーは秋口から原料綿糸単価の上昇にさらされ、製品価格への転嫁が急速に行われてきました。


② 為替の円安

 2021年は相対的に円安が進んだ1年でした。2021年1月は1ドル103.09円で市場は開始しましたが、同12月31日には同115.09円になるなど、年間でみると約11.6%ドル高円安で推移しました。

為替の変動

 一方で、ここ5年ほどは年度間平均集計では、1ドル110円近辺での取引となっており、そのことからみれば、現在の115円越えの水準は、5%ほど想定円ドルレートから円安方向に振れているといえます。


 このところの円安に関しては、アメリカ経済の復調が次第に明らかになってくる中、FRBによる緩和政策が転換され、量的縮小にともなう米金利上昇が見込まることから、日米での金利格差が広がることを見越してのドル買いがベースにありますので、多少の振れ幅はあるものの、今後も円安ドル高の流れは大きく変化しないと市場では受け止められております。


③ 海上運賃高騰など輸入コストのアップ

 20年春のコロナ禍を底としてアメリカ経済は反転拡大に向かっております。また、コロナをいち早く封じ込めた中国も引き続き成長路線を維持してきており、ユーロ圏を含む世界経済は全体としては堅調さが戻ってきている状況です。


 一方で、海外貿易に欠かせないコンテナの総数ですが、コロナ蔓延前の全世界の総コンテナ数は1億8,000万TEU(20FEETコンテナ1本-1TEU)でしたが、各船会社はコロナ禍により大幅に国際貿易が削減されるとの見通しの中、コンテナリース契約の解除、古いコンテナの破却を行いました。


 正確に実情を掴むのは難しいですが、業界では、現在、全世界の総コンテナ数は1億1,000万TEU(推計)と考えられており、稼働コンテナ数は激減しています。ところが、コロナの発端となった中国がコロナ禍からの回復が早く、また21年は北米向けなどのクリスマス需要も旺盛だったこともあり、世界貿易は急回復してきました。


 こうした状況下、アメリカ向けに大量に出荷されたコンテナが、コロナの理由とする港での港湾労働者の減少による荷役遅延の影響を受け、通関待ちのために多くの船が湾内に滞留、結果コンテナ自体も回転しない状態となり、コンテナ不足に拍車をかけました。足許数ヶ月はコンテナの価格が急騰しており、その結果、船会社の海上運賃のアップに直結してきています。


【今後の見通し】

 今後も同じ要因でのコストアップ要求がしばらく続くと考えられます。

 綿花価格に関しては、当面原油を始めとする資源価格の高止まり、乱高下をする証券金融市場から商品市場への投機資金のシフトなどが考えられる状況下、アメリカ、中国の景気回復から需要自体も堅調を持続する見通しのなか、一定のレンジで高止まりをすることが予測されております。


 円相場に関しても、日米金利差の拡大から潜在的ドル買い需要が持続する見通しで、あまり急激に円高方向に回帰する流れであるとは考えにくい状況にあります。


 また、ここ数年、コンテナの需要と供給の関係では、コンテナの製造能力自体が追いついていかない見通しで、しばらくの間、コンテナ価格の上昇~海上運賃のアップ~輸入コストのアップという図式は継続されると考えられます。

    


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